Digital Well-beingとは
Digital Well-beingとは、身体的、精神的、社会的にも良好な状態を保ちながら、デジタル(テクノロジー、デバイス)を利用することです。
デジタル技術は、いつでもどこでも好きなときに使うことができ、私たちの生活になくてはならないものとなっています。デジタルは生活に便利さや快適さをもたらし、楽しみを満たしてくれるものです。その一方で、過度に使いすぎることで身体的、心理的、社会的にさまざまな問題が生じることがあります。
身体的問題
長時間スマホなどのデバイスを使用することで、身体活動の頻度や量が低下することが危惧されており、眼精疲労やストレートネックの危険性が高まることも指摘されています。また夜間のスマホ使用は、睡眠不足や睡眠の質の低下を引き起こすことが懸念されています。
心理的な問題
ゲームやインターネットを過度に使用することで、ゲーム依存やインターネット依存のリスクが高まります。依存症になると、ゲームやSNSの使用をコントロールできず、ゲームやSNSを手放すことに苦痛を感じ、生活に支障が出てしまうようになります。また、誰かと繋がっていることのプレッシャーや不安、過度にデジタルを使用することでのうつ状態の悪化などメンタルヘルスの問題との関連も明らかになっています。
社会的な問題
SNS内での誹謗中傷、子どもたちの間ではネットいじめが問題になっています。匿名性、相手が見えないことでのハードルの低さなどから、他者を傷つける発言、投稿が相次いでいます。被害にあった人は深く傷つき、最悪の場合自死するケースもあります。また、オンラインゲームでも、ゲームの世界に没入し、興奮するあまり、暴力的な言動を抑えられないというトラブルも起こっています。さらに、SNSでは闇バイト、オーバードーズなど危険な情報が容易に入手できてしまうことで若者が危険にさらされています。
JDWAでは、これら身体的、心理的、社会的問題の解決と予防を目指しながら、
デジタルを排除するのではなく、
デジタルとよりよく付き合っていくことができる社会の実現に貢献します。
JDWAが重点的に取り組むデジタルに関する社会課題
ネット依存・ゲーム依存
中高生のネット依存の割合 7.9%(1)
若者のゲーム依存の割合 5.1% (2)
成人以降よりも10代の方がリスクが高い
依存症予備軍を含めるとさらに数は多い
ネットの過剰使用や依存症の予防と支援体制の整備が必要
効果的なペアレンタルコントロール
フィルタリングサービスの利用率は38.1%,ペアレンタルコントロール機能の利用率は27.9%にとどまる(乳幼児〜高校生までの保護者の回答) (3)
ペアレンタルコントロールの普及と効果的なスマホやインターネット使用の管理のあり方を検討する必要
ネットいじめ
小・中・高校などで認知された2022年度のネットいじめの件数は、23,920件に上り、2021年度(21,900件)から2020件、2020年度(18,870件)からは5050件も増加。毎年過去最多を更新
ネットいじめの防止や対策が急務
SNSでの誹謗中傷
総務省が運営委託する「違法・有害情報相談センター」に寄せられたインターネット上の書き込みにおける誹謗中傷やプライバシー侵害、トラブル等に関する相談件数は2022年度は5745件と、8年連続で5000件を超えた。(5)
誹謗中傷への適切な対処と加害を減らす取組を推進
乳幼児期の発達への影響
2〜3歳の子どもとその母親を対象に調査したところ
子どもが一人でデジタルメディアを使用する時間と母親のデジタルメディアの使用時間が長いほど、子どもの言語能力が低いことがわかった。(6)
3〜5歳の脳への影響を調査したところスクリーン利用時間の増加は、実行機能、読解能力、言語発達に関する脳領域に悪影響を与える可能性(7)
乳幼児のデジタル使用が発達に与える影響について保護者への啓発が必要
ゲームの高額課金
オンラインゲームに関する消費生活相談の増加傾向
特に 20 歳未満の相談件数が増加
2021年は 20歳未満の相談が 4,443 件と全体(7,276 件)の過半数を占めた。
20 歳未満のゲーム課金額の割合については 10 万円〜50 万円 未満(44.0%)が最多であり、高額である(8)
若者のゲームの高額課金への対策が必要
ゲームでの暴言
海外の調査では、オンラインゲームをプレイする人の74%が暴言や嫌がらせなどの有害行為を目撃または経験している。(9)
ネット・ゲーム依存について相談をした保護者の約半数が子どもの暴言に関する問題を報告した(10)
家庭での暴言への対応法や感情コントロールのスキルを育む
ネットに起因する犯罪
2022年におけるSNSに起因して犯罪被害に遭った児童の数は1,732人前年比で4.4%減少したものの、依然として高い水準で推移(11)
危険性の周知や安全なインターネットの使用を推進
健康的なeスポーツの推進
子どもが「eスポーツ選手」を目指すことは親の約6割が反対(12)
学校の部活動など教育活動の一つとしてeスポーツを推進するという質問への回答は「賛成」約2割、「どちらともいえない」は約半数(13)
eスポーツについて理解が得られておらず、健康的にeスポーツに取り組める環境の整備などが必要
引用文献
- (1)Mihara, S. et al. (2016) Internet use and problematic Internet use among adolescents in Japan: A nationwide representative survey. Addictive Behaviors Reports, 4, 58-64.
- (2)Higuchi, S. et al. (2021) Development and validation of a nine-item short screening test for ICD-11 gaming disorder (GAMES test) and estimation of the prevalence in the general young population. Journal of Behavioral Addictions, 10(2), 263-280.
- (3)総務省(2021)我が国における 青少年のインターネット利用に係る フィルタリングに関する調査. https://www.soumu.go.jp/main_content/000746233.pdf
- (4)文部科学省(2023)令和4年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果について. https://www.mext.go.jp/content/20231004-mxt_jidou01-100002753_1.pdf
- (5)総務省(2023)令和4年度 インターネット上の違法・有害情報対応 相談業務等請負業務 報告書(概要版)https://www.soumu.go.jp/main_content/000881624.pdf
- (6)Mustonen, R., Torppa, R. & Stolt, S. (2022) Screen Time of Preschool-Aged Children and Their Mothers, and Children’s Language Development. Children, 9(10),1577.
- (7)Hutton J. et al. (2020) Associations between screen-based media use and brain white matter integrity in preschool-aged children. JAMA Pediatr, 174(1), e193869
- (8)消費者庁(2022)オンラインゲームに関する 消費生活相談対応マニュアル. https://www.caa.go.jp/notice/assets/future_caa_cms201_220629_17.pdf
- (9)Unity (2023) Toxicity in Multiplayer Games Report https://create.unity.com/toxicity-report
- (10)ネット・ゲーム依存予防回復支援MIRA-i(ミライ)による調査
- (11)警察庁(2022)令和4年の犯罪情勢 https://www.npa.go.jp/publications/statistics/crime/r4_report.pdf
- (12)アサヒ炭酸ラボ 親世代に聞く、いまどきのeスポーツ意識調査https://www.asahiinryo.co.jp/company/newsrelease/2023/pick_0405.html
- (13)茨城県(2021)令和3年度ネットリサーチ「eスポーツ」に関するアンケート調査結果https://www.pref.ibaraki.jp/shiru/kensei-sanka-iken/net-reseach/kekka/documents/r3net-research11.pdf
デジタル利用の長時間化・低年齢化の中で、
子ども・若者がデジタルの問題に直面するリスクは高まっています。
その他にも長時間のスマートフォンやデバイスの使用、常時オンラインに接続された状態、情報に過剰に触れることなどが、ストレス、不眠、注意・集中力の問題など、さまざまなウェルビーイングの問題を引き起こす可能性があります。また働き方改革やリモートワークの普及により、デジタルツールの使用は一層不可欠になっています。しかし、これに伴う労働者のストレスやワークライフバランスの課題も浮き彫りになっています。